論説 「円安誘導」批判は回避されたが デフレ脱却の実効性あげよ

更新日:2013年 2月20日 (水)

 安倍政権が推し進める「アベノミクス」が、円安を誘導するとして内外で批判を浴びていたが、モスクワで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、日本を名指しした円安批判は回避された。懸念材料が解消され、市場では安倍政権への期待感が高まっているが、「円安誘導」への批判が再燃しないよう、政策の目に見える効果が必要だ。
 第2次世界大戦以前、ブロック経済化とともに、通貨切り下げ競争が顕著になったことがある。いわゆる「近隣窮乏化政策」で、大恐慌から抜け出る課程で保護主義が各国に蔓延し、結果的に世界大戦につながったといわれている。この苦い記憶が円安誘導批判の底流にあるのだろう。また一時、政府の要人が円安誘導ともとれる発言をしたことも、疑念を高めた。
 日本の政策の主眼は、不況とデフレの脱却だが、政策の結果として生じる円安は容認している。そのため輸出産業では相次いで利益を増額する動きが出ている。半面、原材料を輸入に頼る産業はコスト上昇で収益が圧迫されるが、トータルでみれば企業収益にはプラスの効果が大きいのは間違いがない。
 円安により産業の競争力が復活すれば、企業の設備投資や雇用意欲が高まり、賃金のアップが期待できる。安倍政権が描く理想図だ。
 しかし、ことはそううまく進むだろうか。かつては盛んに輸出されていた繊維や陶磁器などの地場産業は、競争力を失って衰退して久しい。供給力そのものが失われているため、せっかくの円安を生かし切れていない。
 「アベノミクス」は輸出産業からみれば大いに歓迎だが、内需依存型の中小企業にとってはどうだろうか。政府・与党は経済界の首脳に、国民の所得引き上げに協力を要請している。経団連の米倉弘昌会長は「デフレを脱却すればそういう方向になる」と述べたと伝えられているが、賃上げに消極的な姿勢を転換したわけではない。仮に政策の効果で賃金が増えても、それが消費に回るのには時間がかかる。
 G20で麻生太郎財務相は「金融緩和はデフレ脱却が目的」とし、政策の目的が「円安誘導」ではなく、金融緩和と財政出動、成長戦略の「三本の矢」で経済再生に取り組むと強調した。その成果もあって、名指しの円安批判は回避されたが、国際会議の場で表明したからには「国際公約」の性格を帯びる。そのため実効性を担保する具体的な政策が必要となってくる。大胆な金融緩和とともに、国民が安心して消費を増やすことができる施策も必要だ。雇用の安定化や高齢者対策など、メニューはたくさんある。

 

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