「論説」 拘束日本人の無事祈る 「逃げるが勝ち(価値)」

更新日:2013年 1月21日 (月)

 北アフリカのアルジェリアで日本人が武装勢力に拘束された。心から無事を祈る。油断はなかったと思うが、新興国では油断しなくてもトラブルに巻き込まれる可能性が常にある。日系企業の新興国進出はこれからも増える。海外駐在員は目では見えないリスクを、肌で感じる能力が求められる。
 ほとんどの新興国は法治国家だが、領土全てで法が厳密に運用されているわけではない。自分の意思に基づいた行動を進めようとすると、たとえそれが法にかなっていても権力を持つ「当局」に金銭を要求されることがある。賄賂は違法行為であるが、仮に身の安全を脅かすことにつながる雰囲気を感じたら、金銭を出さざるを得ない。それが現実だ。
 20年前、アルジェリアを訪問した。隣国のモロッコのアルジェリア大使館でビザを申請したのだが、片言のアラビア語で渡航の内容を伝えると「この大使館をビザ申請のために訪れた日本人で、アラビア語を話すのはおまえが初めてだ」と担当官。通常、申請から発給まで2~3日を要するが、その場で発給してくれた。厳密に考えると違法行為だったのかもしれない。
 アルジェリア国内においてもそうだ。当時、アルジェリアの街中に「闇両替商」なるものが存在した。米ドルなどの外貨を、銀行の5倍近く良いレートで現地通貨に交換してくれた。これはあきらかに違法行為だ。
 街中には外貨ショップなるものがあり、日米欧の家電製品がところせましと並べられていた。現地通貨では商品を購入できず、使用できるのは米ドルなどの外貨のみ。一方、現地人は銀行で現地通貨を外貨に両替することが厳しく規制されていた。政府が外貨の流出を統制していた。
 ところが現地人は日米欧の家電製品がのどから手が出るほど欲しい。外貨を入手するには渡航者と直接商談するしかない。アルジェリアは渡航者が極めて少ない。このような背景から、銀行の5倍近いレートの「闇両替商」が成り立った。
 渡航者は当然、「闇両替商」のお世話になるわけだが、違法行為である。街中で声をかけられリスクを肌で感じつつ、のこのこついていくと目を光らせている「当局」に拘束されかねない。どうするか―。
 渡航者自ら、一般的なスーパーなどに飛び込み、こちらから闇両替を申し込むのだ。相手は店を構えており、逃げられない。本当の「闇両替商」よりレートは悪いが、拘束される危険性はぐっと低くなる。これがリスクを肌で感じた時の一手だ。
 これは理想論である。今回のアルジェリアの一件は、隣国での空爆が遠因にあるらしい。リスクを肌で感じたら逃げる。「逃げるが勝ち(価値)」である。

 

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