「論説」 円安はどこまで進むか

更新日:2013年 1月16日 (水)

 年明けから外国為替市場では円安ドル高傾向が続いている。前週末のニューヨーク市場の流れを受け、週明けの東京市場では一時1ドル=89円台をつけた。日銀の金融緩和策の強化の思惑から、円はユーロに対しても値下がりが続いている。
 最近の円安は、日本の国際競争力の変化を映したともいえる。11月の日本の経常収支は2224億円の赤字で1月以来カ月ぶり。日中関係の悪化などで貿易収支の赤字は続いていたが、正月休みなどで輸出が減りやすい1月を除くと、経常収支が赤字になるのは異例だ。
 円安は輸出企業の収益にプラス。しかしこのところの急ピッチな円安は、輸入価格の上昇で国民生活に与える影響が懸念される。昨年11月前半には1ドル=79円台だったため、2カ月で約10円も動いたことになる。産業界には産業の空洞化を抑止できるとこの流れを歓迎する向きが多いが、一方で輸入原材料の値上がりにより電力業界や石油化学業界などの業績に与える影響が心配だ。
 円相場の今後を見通すのは難しい。為替レートを決めるのは各国の成長率や、金利、国債収支などの要因に加え、地政学的な要素も加わる。領土問題などで中韓との緊張が高まれば、国際的な余剰資金はわが国への投資を躊躇する。昨年吹き荒れたEUの債務問題が一応の落ち着きを見せ、相対的に安定していると見られていた日本国債を買っていた資金が細ることも予想される。安倍晋三首相の掲げる大胆な金融緩和策が変わらなければ、しばらく円安トレンドが続くと見るのが自然だが、どの水準が適正レートなのかは「相場に聞く」しかない。
 甘利明経済再生担当相は「過度の円安になると、輸入価格の上昇が国民生活に影響を与える」と語った。今はまだ行き過ぎた円高是正の段階だが、円安の勢いが止まらなければ、そのような心配も出てくる。デフレ経済の中、「輸入インフレを心配するのは時期尚早」と見る向きもあるだろうが、円高も円安もスピードが早すぎれば、経済のかく乱要因になり好ましいことではない。
 安倍政権の政策は、円高を止めるのに一定の効果があったのは事実だ。しかし今の円安はそれだけではなく、日本を取り巻く環境の変化や、国際競争力の低下などファンダメンタルズの変化を色濃く反映している。だとすればそれを手放しで喜ぶことはできない。国際競争力を回復するための手を打つことも必要だろう。
 今の為替の動きが「良い円安」か「悪い円安」かの見極めをしっかりし、必要とあれば政策の転換を素早く行うことが求められる。

 

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