「論説」 日銀の国債引き受け 総選挙争点に 国民の議論を

更新日:2012年 11月21日 (水)

 自民党の安倍晋三総裁が脱デフレ対策として、政権に復帰した場合に建設国債の日銀引き受けを検討する考えを示したことが、各方面に波紋を呼んでいる。国債の日銀引き受けは、財政の規律を守る必要性ほか、戦前の苦い記憶から長らくタブー視されていた。安倍氏があえてそれに踏み込もうとしていることは、経済再生に本腰を入れるという総選挙に向けたアドバルーンだが、難しい問題もはらんでいる。
 建設国債は財政法で発行が認められている国債で、使途は公共事業など国民の財産になるものに限られており、12年度予算では5兆9千億円が計上されている。いわば企業の設備投資のようなもので、赤字国債とは性格が異なるが、市場で流通するのは同じだ。
 戦前には高橋是清蔵相が日銀引き受けによる国債の大量発行で景気を刺激し、恐慌からいち早く立ち直った例はある。しかし軍事費急増を招き、軍部の台頭でそれを抑制することができなかった。一時は経済の再生に成功しても、国債発行によって膨らんだ予算を抑えることがいかに難しいかの例だ。
 安倍氏の主張に野田佳彦首相は「日銀の独立性に問題が出てくる」と批判した。経済界にも財政規律の低下や国債格下げのリスクなどから、慎重な意見が多い。
 日銀の国債引き受けは今の法律では禁止されているが、総選挙の結果によっては現実味を帯びてくる。過去年間、デフレから脱却できなかった日本経済にカンフル剤を打つには、これまでの日銀の金融緩和策では足りず、相当思い切った手が必要なのはわかる。
 白川方明日銀総裁はこれまでに物価上昇率1%が見通せるまで、強力な金融緩和政策を続けると語っている。いわゆるインフレターゲットを念頭に置いたものと思われ、その一方、20日の金融政策決定会合では9、10月と2カ月連続で行った新たな金融緩和策は見送った。また同総裁はこの日の会見で「日銀の独立性尊重を」と語り、国債引き受けには難しい問題があるとの見解を表明した。
 安倍氏はそんな日銀にプレッシャーをかけたいのだろう。しかし日銀による国債引き受けはやはり劇薬であるとの見方が根強い。高橋財政の時代と今では環境も時代背景も違う。デフレギャップが著しかったのは同じだが、当時は今ほどの国債の累増はなかった。現在は歴史的な低金利のため国債の利払いは抑えられているが、経済情勢の変化で金利はいつ上昇するかもしれない。
 この問題は総選挙の新たな争点に浮かび上がった。目先の利害にとらわれない国民の幅広い論議が必要だ。

 

中部経済新聞の記事がスマホで読めます

2012年 11月21日の記事一覧

ニュースカレンダー

読み込み中...

過去の記事はこちらのページからご覧ください。

カテゴリー一覧

新聞の記事などについてのお問い合わせは、以下までお電話下さい。
中部経済新聞社 編集部
TEL : 052-561-5212

皆様の生の声をお聞かせ下さい。
記事に対する意見・ニュース提供

 

現在の位置:ホーム > ニュース > 2012年11月 > 21日 > 「論説」 日銀の国債引き受け ...