「論説」タイ洪水対策プロジェクト報告 自然環境の違い、浮き彫りに

更新日:2012年 5月 8日 (火)

 昨年タイで発生した洪水に対し、JICA(独立行政法人国際協力機構)は降雨をはじめとする過去の気象や河川に関する現地情報を入手。東京大学生産技術研究所、独立行政法人土木研究所水災害・リスクマネジメント国際協力センターの協力を得て、チャオプラヤ川の洪水に関する解析を行った。
 その結果を踏まえながら、タイ政府とともに洪水対策の検証や協議を実施。このほど東京、名古屋、大阪で進捗状況を報告するセミナーを開いた。
 昨年は東日本大震災で想像を絶する津波被害に遭遇し、製造業のサプライチェーンが寸断されて産業界に大打撃を与えた。
 生々しい記憶が残る数カ月後、タイの洪水が発生。四国に匹敵する1万8千平方キロが浸水した。その結果、日系企業469社を含む8工業団地の808社が洪水被害を受け、製造業のサプライチェーンが大打撃を受けた。
 津波も洪水も水に関する災害であり、日本を代表する製造業のサプライチェーンが寸断されたという類似性から、同じような災害との印象を拭えなかったが、報告セミナーでは逆に自然環境の違いのほうが強く印象に残った。
 日本の場合は、勾配のある河川を濁流が勢いよく押し寄せてくるというのが洪水のイメージ。水の荒々しさは、今回の津波の激しさにも通じる。勾配のゆるやかなチャオプラヤ川はこれとは違って、洪水に勢いがなく下流域へ向かってゆっくりと流れていく。
 800人を超える死者が出たが、日本の洪水のように急流にのまれて逃れられなかったのではなく、不注意などによるものがほとんどだったという。
 河川に勾配のある日本では、降った雨がそのまま下流域へ流れてくるため、1・5倍の雨が降れば流れてくる水量もほぼ1・5倍になる。
 ゆっくり流れるチャオプラヤ川は、雨のほとんどが下流に流れるのではなく地中にもしみ込む。例年は7割の雨が地中に浸透して3割が洪水になるとすると、浸透する雨の量は変わらないので、降雨量が1・5倍になると洪水量は2・5倍以上になり、それだけ大洪水が発生しやすい状態にあるのだという。
 すなわち、東日本大震災の津波が歴史的記録の中に埋もれていた衝撃的な災害であったのに対し、チャオプラヤ川の大洪水は予想外の災害ではなかったのだ。
 経済のグローバル化は、経済的事象の数値的比較によって均質な世界像を形づくってきたが、このような災害についての報告は、自然環境やそこに住む人たちの生活、考え方、育んできた歴史の違いなどを改めて浮き彫りにしてくれる。

 

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