GDP成長率の要因分解

更新日:2012年 4月10日 (火)

 消費税率引き上げをめぐる論議には、理解し難い面がある。少子高齢化が進むので、引き上げは止む終えないが、財政の無駄は徹底排除し、景気悪化局面では実施しないというように、議論すること自体を否定する人を除けば、賛成派も反対派も、認識はさほど変わらないように見えるからだ。
 にもかかわらず賛否が分かれるのは、使う言葉は同じでも意味する内容が異なるからだろう。
 例えば、100人が「徹底的な無駄の排除が必要」と言ったとする。全員同じ意見に見えるが、何が無駄かについて考え方が異なれば、意見はばらばらということになる。
 議論をかみ合わせるには、国や地方自治体の予算項目一つ一つについての詳細な分析と全体像の把握が不可欠。有権者も、膨大な予算関連資料を読破しなければ、清き1票を投じることはできない。
 現実には不可能であり、政党間の主張の差異がメルトダウンしていく状況下では、有権者の判断はムードに流され、政治家もムードメーカーの勝利する可能性が高くなる。
 悪化局面では増税しないという景気の判断にも、不透明な面がある。売り上げ不振が続いていても、一方でヒット商品が生まれていれば、経営力の問題ということになるが、景気のせいと嘆きたいのが人情。景況調査の回答者には、このような気持ちの揺らぎがあるからだ。
 より客観的に日本経済をイメージできないだろうかと日銀のホームページを見ていたら、「日本の実質GDP成長率の要因分解」という図表があった。
 実質GDP成長率を、生産性伸び率と就業者数変化率のふたつの要因に分解し、グラフにしたものだ。
 1970年代や80年代は、就業者数が増え、まだキャッチアップの時代だったので生産性も伸び、年平均の実質GDP成長率は4、5%の水準にあった。
 90年代も生産性が1・0%伸び、就業者数も0・5%伸びたので、実質GDP成長率は1・5%。
 2000年代は、生産性は0・9%増で90年代と同程度の伸びを維持したが、就業者数がマイナス0・3%となったので、実質GDP成長率は0・6%と半分以下に減少した。
 今後については、就業者数は2010年代マイナス0・7%、20年代マイナス0・8%、30年代マイナス1・2%という見通しなので、1・0%の成長さえ容易ではないことになる。
 リーマンショック後の状況を乗り切り、大震災後の復興を目指す現在を景気悪化局面と見るならば、消費税率引き上げのタイミングは永久にやってはこない。増税しないですむだけの経済成長を目指せという主張も、空想めいて聞こえる。

 

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