自然生かす多様な工夫に感動

更新日:2010年 9月 7日 (火)

 空は高く、眼下には青い海が広がる。体を沈めている木の浴槽は空中に浮かんでいるかのようで、止まることなく湯が流れ込み、あふれて流れ落ちる湯は、はるか下の海面へ落下していく……ように見える。
 伊豆にあるこの温泉ホテルへ宿泊することになったのは、よく見かける露天風呂とは異なる風情で自然と温泉が融和する、魅力的な写真を見たからだ。宿泊したくなり、電話をしたら、一室空いているとのことだったので、すぐに申し込んだ。
 フロントで宿泊用紙に記入していると、「名古屋からですか」と珍しそうに言われた。後で分かったが、関東地方ではよく宣伝しているホテルらしく、同地区からの宿泊が中心であるため、少々の驚きを伴う歓迎の気持ちで迎えられたのだ。
 写真の温泉は、宿泊するホテルの姉妹施設で、ホテルからそのまま入館でき、チェックインして訪れたが、もちろん浴槽からあふれる湯が眼下の海に落下しているわけではなく、微妙な設計上の工夫により、そのように見える造りになっていた。
 温泉を中心とした複合施設が集積し、送迎バスの発着する鉄道駅もいかにも観光地風で、地域全体の開発が進み、幅広い客層を吸収していて、宿泊したホテルもにぎわっていた。
 翌日に宿泊したのは、鉄道駅でふた駅離れているだけだったが、雰囲気のまるで異なる隠れ家風の落ち着いたホテルで、すでに10年くらいの歴史があり、そこを愛するリピーターに支えられているようだった。
 実は知人の紹介で、このホテルへの宿泊が先に決まっていて、お盆を外したせっかくの夏休みだったので、連泊を計画し、運良く初日の宿泊先が確保できたのだ。
 2泊目のホテルは、樹木に包まれた渡り廊下を歩いていくと、高台にひなびた小屋があり、そこで着替え、森と海の見渡せる中で湯が楽しめた。ほかに大浴場もあったが、部屋数が少ないので、ほかの客と一緒になることがほとんどなく、自分たちだけの施設のような満足が得られた。
 料理もそれぞれの雰囲気に合った工夫がなされ、鉄道でふた駅しか離れていない温泉ホテルでありながら、コンセプトも自然の生かし方もまるで異なる造りであることに感動し、生き生きした緑は猛暑下でも爽快で、忘我に浸ることができた。
 歴史の蓄積と関東という大消費地に支えられ、観光地としての成熟度が感じられたが、自然の活用法の多様性には教えられるものが多く、どんな地域であっても、国に頼ることなく、自らの創意工夫と努力で地方の時代が確立できるのではないか、と勇気づけられる夏休みになった。

 

中部経済新聞の記事がスマホで読めます

2010年 9月 7日の記事一覧

ニュースカレンダー

読み込み中...

過去の記事はこちらのページからご覧ください。

カテゴリー一覧

新聞の記事などについてのお問い合わせは、以下までお電話下さい。
中部経済新聞社 編集部
TEL : 052-561-5212

皆様の生の声をお聞かせ下さい。
記事に対する意見・ニュース提供

 

現在の位置:ホーム > ニュース > 2010年9月 > 7日 > 自然生かす多様な工夫に感動...