地球上のあらゆるデータを電子化して共有しよう―。米国の検索大手・グーグルが提唱した構想が現実のものになりつつある。米国の25図書館が参加する世界最大の仮想図書館が、11月中に本格稼働する。当初450万冊、1年半後には1千万冊以上の蔵書を電子化し、パソコンなどを通じて誰でもどこからでも無料で閲覧できる。全文を閲覧できるのは著作権が切れた書籍が中心だが、著作権をめぐるルールが確立できれば、さらに拡大しそうだ。
グーグルはすでに2004年に、電子化した書籍データを、オンラインで検索できるサービスを始めているが、全米作家協会などから著作権を侵害しているとの訴訟を提起されていた。これまでに、電子化で得られる利益の一定割合を著作権側に還元することで、当事者同士が和解案に基本合意。来年の早い時期にニューヨークの連邦地裁で承認の可否を判断すると見られ、書籍の全面電子化に向けて進みだしたと言える。
この和解案は、英語圏以外には及んでいないため、当面は日本などへの影響はない。欧州の政府も全面電子化には懐疑的で、日本の作家らの間では賛否が広がっていたという。これまで培われた本の文化が、一気に電子化されることの戸惑いのほか、グーグルなどの特定企業の主導のもとに事が進むことへの反発もある。紙と異なり、実体の見えない電子データが、後世まで損なわれず伝えらるのかという疑問もある。
しかし、著作権の切れた書物の電子化の流れは、もはや止められないだろう。わが国でも、著作権切れの作品を電子化して無料で提供するサイトはすでに存在する。問題は著作権のある作品の電子化に、どんなルールを作るかだ。インターネットには半ば著作権を無視した無料の情報があふれているが、それではコストをかけて収集した情報の提供者が報われない。
英語圏で起きていることは、いずれわが国にも波及してくるだろう。ネット上の著作権の取り扱いと、課金の仕組みをめぐるルールづくりに、わが国も早急に通り組む必要がある。このままでは英語圏と非英語圏の情報格差がさらに広がり、経済的にもマイナスに作用することを恐れる。