論説 急速に細る経常黒字

更新日:2009年 2月10日 (火)

 輸出環境の悪化でわが国の国際収支が急速に悪化している。財務省が発表した二〇〇八年の経常収支の黒字額は前年比34%減り、一九八五年以来最大の落ち込みになった。
 世界的な金融危機の波及で、欧米向け輸出が後退し、貿易黒字が67%減ったのが主因。昨年夏までの原油高騰で輸入が過去最大にふくらんだのも「ダブルパンチ」となった。
 輸出の減少は昨年末にかけ加速度を増し、昨年十二月の貿易収支は二カ月連続の赤字。経常収支の黒字も92%減と、赤字すれすれまで落ち込んだ。
 これを受けて九日の外国為替相場は、一ドル=九十一円台の円安となった。これまでの円高一辺倒の動きとは、明らかに変化が見られる。
 自動車や半導体など主力輸出商品の動きは、年明け後も芳しくない。輸出減は、過去十年間、外需依存が高まっていたわが国の経済に深刻な打撃を与えており、景気回復の道筋は一層見えにくくなった。
 最近、気になるのは、わが国の輸出競争力に翳りが見られることだ。北米市場では燃費のよい小型車の分野では日本車が独壇場だったが、競争相手の韓国車が力を付けてきた。半導体の分野ではサムソンの後塵を拝し、携帯電話ではわが国メーカーの存在感は薄い。
 欧米市場が長期間、低迷すると予想される中、中国などの新興国市場の重要性は今後高まっていく。これらの国の市場を開拓するためにはコスト面だけでなく、他の国に負けない品質の製品を提供することが必要。その点、気がかりなのは、生産現場に身分が不安定な派遣労働者や非正規社員を多く投入していること。長期雇用が保証されないのに、品質向上に必要な技術の継承やモチベーションを保つことができるのだろうか。一考を要する。
 英国では十九世紀の後半、貿易赤字を投資収益などで補い、経常収支の黒字を確保する状態が続いた。わが国の国際収支の構造も、それに似通ってきたようだ。成熟国家の宿命といえばそれまでだが、ものづくりの競争力が失われれば、経済は長期停滞せざるをえない。
 やはり、それは避けたい。経済に活力を取り戻し、若者が将来に期待を持てる国にするには、やはり雇用の安定を図るのが近道だと思う。

 

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