環境特集
生命を脅かす海洋プラスチックごみ
※出所:Plastics Europe
半世紀で世界生産量20倍 日本は使い捨てプラ大国
7月1日から全国でプラスチック製買物袋(レジ袋)の有料化が小売店に義務づけられる。反対の声も出ているが、すでに有料化の動きは広がっており、対象外となる「バイオマス素材の配合率が25㌫以上」のレジ袋も有料にして、売上の一部を社会貢献に活用する小売店もある。こうしたレジ袋削減に取り組む背景のひとつに海洋プラスチックごみの問題がある。
プラスチックは軽量で丈夫、加工しやすいことからレジ袋やペットボトル、容器、自動車、建築資材など多方面で活用されている。世界の年間生産量は過去50年で約20倍に拡大。約3億8000万㌧(2015年)が生産され、そのうち40㌫近くが包装や容器と推計されている。廃棄量に目を転じれば、人口1人当たりのプラスチック容器包装廃棄量が最も多いのはアメリカで、次いで日本となっている。不正投棄やポイ捨てされたプラスチックごみは、風や大雨にさらされて川へ、やがて海に流れ込む。毎年約800万㌧のプラスチックごみが海洋に流出しているという試算や、2050年には海洋中のプラスチックごみの重量が魚の重量を超えるという試算もある。また、海洋プラスチックごみの主要排出源は東アジア地域及び東南アジア地域であるという推計もあることから、開発途上国を含む世界全体の課題として対処することが急務になっている。
環境への懸念に加えて、経済にも重大な影響を及ぼしている。OECD(経済協力開発機構)は、海洋汚染による観光客の減少、漁業への悪影響などの損害が年間130億㌦に達すると警鐘を鳴らす。
生態系への影響問われる企業の開発力
とりわけやっかいなのがマイクロプラスチックだ。時間をかけて紫外線や波によって砕かれた5㍉㍍以下の微細な断片ゆえ回収が困難で、分解されず長く海を漂う。有害な化学物質を吸着する特性があるため、魚や貝がプランクトンと間違えて食べてしまうと、やがて有害物質は濃縮され、食物連鎖を通じて生態系や人体に悪影響が及ぶ恐れがある。マイクロプラスチックによる被害の実情はまだよく分かっていないが、有害物質が体内に取り込まれることは楽観視できない。
こうした問題を解決しようと世界各国で、レジ袋をはじめプラスチックごみの規制が進められている。UNEP(国連環境計画)の報告書によると2018年時点で、127の国と地域がレジ袋の法規制を実施し、うち83の国と地域が無料配布を禁止している。今年になって新型コロナウイルスの予防策として使い捨てプラスチックの需要が急増し、規制の施行延期や一時停止が相次いだが、地球環境を守る、持続可能な社会を作るという理念が揺らぐことはない。
欧州などではレジ袋規制をてこに、プラスチックのより賢い使い方を推し進め、ライフスタイルの変革を促すとともに、域内企業の競争力を高めていくことを視野に入れている。レジ袋規制の背景には、こうしたしたたかな国際競争があることを認識しなければならない。そして企業の技術やノウハウを他国の問題解決に活用していく視点が求められる。