環境特集
持続可能な開発目標SDGs①社会貢献と企業利益との両立
誰一人取り残さない持続可能な開発目標
新型コロナウイルス感染対策が求められるなか、持続可能性への関心が一段と高まっている。昨年11月に中国で見つかったウイルスが、数カ月間で世界全体に広がったのは、グローバリゼーションとの関係を抜きにしては語れない。世界がより深く結びついたことで、人の往来やモノのやり取りが盛んになった一方で、ある国が何らかの理由で危機に陥れば、世界全体にさまざまな影響が及ぶ。今回のコロナ禍は、まさにその一例だ。思わぬリスクが顕在化し、持続可能性そのものが危うくなりかねない時代だからこそ、SDGs(エスディージーズ)の考えを知っておく必要がある。
SDGsは、2015年に国連サミットで採択された「持続可能な開発目標」だ。2030年までに達成すべき17の目標と、そこから枝分かれした169のターゲットで構成され、地球上の「誰一人取り残さない」ことを誓っている。構成が多岐にわたるので、煩雑に思えるかもしれないが、ポイントになるのは「環境」と「経済」、そして人権や暮らしといった「社会」の3分野の調和を図ることだ。以前のMDGs(ミレニアム開発目標)が途上国の開発問題を中心にしていたのに対して、その後継となるSDGsは先進国を含めたすべての人々の課題を網羅しているのが新しい。
企業の社会貢献といえば以前なら「利益の一部を社会に還元する」という考え方が一般的だったが、これだと景気動向に左右され、綺麗事で終わることが多かった。その点、SDGsの目標は社会貢献と企業利益との両立が前提となる。あるコーヒーチェーンを例に挙げると、一昔前のビジネスモデルのように生産者から搾取することによって利益を上げるというのではなく、生産者に適正な賃金を払い、品質と収益が両立できる栽培方法の確立を目指す。結果として消費者に高く支持されるブランドが構築され、業績も継続的にアップするという考え方だ。社会貢献を果たしつつ、利益も上げながら社会を変えていこうという発想がSDGsの特徴で、「持続可能な」と表現されるゆえんだ
新たな事業機会の創出 中小企業にもメリット
中小零細企業からするとSDGsは縁遠い話に思えるかもしれないが、そんなことはない。親和性があり、企業のブランディングとしても役立つ。例えば「うちの会社は食品関連だから、2番目の目標『飢餓をゼロに』でいく」と決めれば、従業員の意識に統一感が生まれ、アイデアが出やすくなり、行動にも移しやすい。スピードという点では大企業より分がある。こうした姿勢を発信し続けることで、取引先はもとより、消費者にも「この会社は環境意識が高い」と受けとめてくれるようになり、かくして世間における自社(商品)のポジションを明確にすることができる。
そもそもSDGsが関係するのはグローバルな取り組みだけではない。企業が⾏う事業そのものはもちろん、普段から取り組んでいる節電や節⽔、社員の福利厚⽣など、企業が⾏う⾏動すべてがSDGsとつながる。環境省が中小企業向けに編集した「SDGs活用ガイド」では、次の可能性が広がるという。①企業イメージの向上 ②社会の課題への対応 ③生存戦略になる④新たな事業機会の創出―SDGsの導入にルールはなく使い方はさまざまだが、理解して活用すると競争で優位になる。
外務省では「ジャパンSDGsアクションプラットフォーム」というWEBサイトを開設し、企業に参考情報を提供するほか、先進的な団体への表彰制度「ジャパンSDGsアワード」などを通して、取り組みを後押しする。同WEBサイトには取り組み事例が数多く紹介されているので、これからSDGsに取り組もうとする企業はヒントになるはずだ。